ビジネスやかしこまった手紙などで使われている「お力添え」という言葉ですが、正しく使えているでしょうか。ビジネスメールや社外のビジネス文書などでもみたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
「お力添え」の詳しい意味を知るまえに、まずは「お力添え」にはどんな例があるのかをみていきましょう。また、例文とともに解説もつけてみましたので、使う時の参考にしてみてください。
「お力添え」の例文は?
お力添えいただき
- 「昨年は、○○の企画にてお力添えいただき、ありがとうございました。」
- 「あの時の仕事は、お力添えをいただき、感謝申し上げます。」
「お力添えいただき」で使う場合は、「お力添えいただき、ありがとうございました」と感謝の言葉がセットになっている使い方をするといいでしょう。「お力添えいただき」は「力を貸してもらって」という意味ですので、通常の言葉に直すと「力を貸してもらって、ありがとう」となります。
お力添えのほど
- 「○○のことに関しましては、お力添えのほど何卒よろしくお願いいたします。」
- 「どうかこの件は、お力添えのほどお願いしたく存じます。」
「お力添えのほど」を使う場合は、誰かに依頼をする時に使う言葉となります。例えば目上の人方に何かを依頼する時には使える例文です。「お力添えのほど何卒よろしくお願いいたします」の通常の言葉としては「手助けしてほしいです、おねがいします」という意味となります。
お力添えあってこそ
- 「○○様のお力添えあってこそ、○○が成功しました」
- 「ユーザーの皆様のお力添えあってこそ、弊社のサービスが続いています。」
「お力添えあってこそ」は相手が力を貸してくれたことが、物事の成功につながったことを感謝と一緒に伝えたい時に使う言葉です。「○○様のお力添えあってこそ、○○が成功しました」という言葉を通常の意味にすると「○○さんが力を貸してくれたから、成功しました」ということになります。
お力添えできず
- 「お力添えできず、申し訳ありません」
「お力添えできず」という言葉は一見、自分が相手の力になれなかったことや役に立てなかったことをお詫びする謝罪だと思う方が多いでしょう。しかし、「お力添えできず」は実は間違った表現です。自分が役に立てなかった場合は「ご期待に添えられなかったこと、申し訳ありません」と表現しましょう。
お力添えいただければ幸いです
- 「○○の件に関しましては、○○様の都合でお力添えいただければ幸いです」
- 「どうか、お力添えいただければ幸いです」
「お力添えいただければ幸いです」は、「できれば力を貸してもらえたら嬉しいです」という意味となります。相手に力を貸してもらえるか検討がつかない時に使うと好印象でしょう。「もしも、あなたが力を貸してくれたら自分は嬉しいです。あなたの都合次第でいいです」とさり気なく力を貸してもらうことをアピールしたい時に使います。
「お力添え」はどんな意味があるの?
「お力添え」の例文をみてきましたが、いかがでしょうか。「お力添え」という言葉は、日常生活ではあまり使うことがありませんが、メールやビジネスの場で相手に依頼をしたい時によく使われる表現です。相手にかしこまってお礼を言いたい時に使うのがポイントです。
しかし、きちんとした意味を知っておかないと間違った使い方をしてしまう場合もあります。ここからは「お力添え」の意味や目上の人に使えるかどうかについてご紹介いたします。
お力添えの意味は?
「お力添え」とはどんな意味があるのでしょうか。「お力添え」は、「力を貸してください」という言葉を敬語に言い換えた言葉です。また、謙譲語に付ける「お○○」が使われていますので、相手に対して使う表現となります。
また、「力添え」とは援助や助力など、相手や物事に対して力を貸すことを意味しています。つまり、「お力添え」は、相手に何か手伝ってほしいことをお願いする時に使われることが多いでしょう。
ご尽力とお力添えの違いってなに?
「お力添え」と似た言葉に「ご尽力」という言葉があります。どちらも似ている言葉なのですが、意味としてはどちらも「助ける」意味になります。
また、「お力添え」と「ご尽力」の明確な違いは「尽力」は「目標のために力を出し尽くす」という意味で「お力添え」は「手助け・手伝いをする」ということです。「ご尽力」も「お力添え」も「助ける」という意味では同じですが『力を出し尽くす』のか『手伝ってもらう』のかの違いになります。
「お力添え」は目上の人に使える?
「お力添え」は目上の人に使っても良い敬語なのでしょうか。調べてみました。「お力添え」は、謙譲語ですので、自分を下にして相手に対して「お○○」を付けています。目上の人方に何か手伝ってほしいことがあれば「お力添え、お願いいたします」と使っても問題はありません。
自分が目上の人に力を貸すことを伝えたい時は?
相手に協力してもらいたいことを「お力添え」と表現しますが、自分から相手に力を貸すことを伝えたい場合はどのように表現したらいいのでしょうか。自分が相手に対して何かを手伝いたい、協力したいことを伝える時は「尽力させていただきます」と伝えましょう。
尽力(じんりょく)は、相手のために自分が力を出し尽くすことという意味を持っています。また、敬意が高い言葉ですので、自分はもちろんのこと、目上の人に使っても失礼にはなりません。注意しておきたいのは相手に対して使う場合は「ご尽力」と使い、自分に対しては「尽力」と使い分けることがポイントです。
尽力を尽くすは間違い?
「尽力」を使う上で一番注意したいポイントが「尽力を尽くす」という表現です。敬語としては、違和感がないと思う方も多いでしょう。しかし、「尽力を尽くす」という表現は間違った言葉になっています。「尽力」はすでに「力の限り尽くす」という意味を持っていますので「尽力を尽くす」は「力の限り尽す尽くす」というおかしな日本語となってしまいます。
尽力という言葉を使う場合は、「できる限り、尽力いたします」や「ご尽力いただき、ありがとうございます。」など1回使うだけで大丈夫です。
「お力添え」の正しい使い方は?
「お力添え」の意味については、理解できたでしょうか。続いては、「お力添え」の正しい使い方についてご紹介いたします。敬語で使う時や年賀状、手紙で使う場合、ビジネスメールやビジネス文書で使う場合の「お力添え」の使い方についてみていきましょう。
相手にお願いをしたい時に
「お力添え」は相手に対して何か手伝ってほしいことや協力してほしいことなど、相手に対して依頼をするために使われる表現です。相手が自分よりも目上の人の場合で、依頼する時は必ず「お力添えをいただきたいです」と伝えましょう。
相手にお礼の言葉を伝えたい時に
力を貸してもらった相手に対してお礼の言葉を述べたい時にも「お力添え」はよく使われる言葉です。また、相手がしてくれた協力が自分のやりたいことに影響したのであれば「○○さんのお力添えがあったからこそ、成功できました。ありがとうございます。」と伝えてみましょう。
敬語
敬語で「お力添え」を使う場合は、謙譲語として使われるのが一般的です。「お力添え」は敬語の分類では謙譲語にあたりますので、自分よりも立場が上の人に使いましょう。また、使う時に注意したい点は「お力添え」は自分に対しては使えないので、使う時は相手に使う言葉だと認識しておきましょう。
年賀状
年に一度の年賀状を送る時に「お力添え」を使いたい場合は、主に取引先に使われることが無難な一言です。例としては、「本年もお力添えのほどよろしくお願い申し上げます」「今年も変わらぬお力添えのほど、よろしくお願いいたします」と書いておくと、今後の取引先との交流も良い関係となりやすいでしょう。
メール
「お力添え」をメールで使う場面が多いのが、ビジネスメールです。ビジネスメールでは、多くの取引を取引先と交渉しなければなりません。取引先の相手に何かを依頼をする時やプロジェクトなどに協力してもらった時に「お力添えしていただき、ありがとうございました。」と文面によく使われることが多い一文といえるでしょう。
ビジネス文書
社外に依頼書などを出す場合でも「お力添え」は使うことができます。「これからもお力添えのほどよろしくお願いいたします」や「何卒お力添えいただきますよう、ご検討のほどよろしくお願い申し上げます」などが使われます。また、より丁寧な言い回しにする場合は「お力添えを賜りたく存じます」と書くと表現するといいでしょう。
「お力添え」の類義語
「お力添え」という言葉の他には、類義語はあるのでしょうか。この項目では「お力添え」の類義語や他の言い換え方についてご紹介いたします。自分がお礼を言いたい時「お力添え」ではなく、違う表現でお礼を伝えたいや相手に依頼をしたい場合は、参考にしてみるといいでしょう。
ご尽力
- 「ご尽力のほど、よろしくお願い申し上げます」
- 「ご尽力を賜りたく存じます」
先ほども、「お力添え」と「ご尽力」についての項目で軽く解説いたしましたが、「ご尽力」は「お力添え」の類義語ともなります。自分から使う場合は「尽力」と表現するのがポイントです。また、「尽力を尽くす」は間違った敬語なので、使う時は注意して使うといいでしょう。
ご協力
- 「ご協力よろしくお願いいたします」
- 「ご協力していただけませんか」
「ご協力」も「お力添え」の類義語となります。「お力添え」を日常的な言葉にすると「協力する」という意味になりますので、「ご協力お願いします」と使いましょう。「ご協力」は目上の人よりも同僚や自分と同じ立場の人に使える言葉ですので、目上の人に使う場合は「お力添え」を使うほうが敬語としては正しいです。
ご支援
- 「ご支援のほどよろしくお願いいたします」
- 「ご支援していただき、感謝いたします」
「ご支援」も「ご協力」と同じく「お力添え」を丁寧な言葉に直した類義語です。ビジネスの場では「ご支援」は「ご愛顧」や「お引き立て」と同じ意味合いで使われることが一般的です。しかし、相手に依頼をしたい場合は「お力添え」を使うほうがより丁寧な言い方となるでしょう。
お手伝い
- 「わたしにお手伝いできることがありましたら、何なりとお申し付けください」
- 「お手伝させていただけませんか」
「お手伝い」も「お力添え」の類義語です。「お力添え」の意味と一番近いのは「お手伝い」ともいえるでしょう。「お手伝い」は自分から使うことが多いですが、目上の人に対して使っても失礼にはなりません。しかし、どうしても依頼したいことがあるなら「お力添え」のほうが丁寧ですので、「お力添え」を使うことをおすすめします。
お知恵を貸す
- 「どうか、○○様のお知恵を貸していただけませんか」
- 「少々、お知恵を拝借したいのですが」
「お力添え」を別の言い方で表現したいのであれば「お知恵を貸していただけませんか」という言い方です。この「お知恵を貸す」という言葉は『相手の力を貸してほしい』と同じ意味ですので、目上の人に対しての敬語としてじゅうぶん活用することができます。
また、「お知恵を拝借」の「拝借(はいしゃく)」は「借りる」という言葉の謙譲語ですので、目上の人に使うのがマナーです。「拝借」という言葉は自分自身には使いませんので、注意しておきましょう。
お骨折り
- 「この度は、弊社のプロジェクトにお骨折りいただき、誠にありがとうございました。」
- 「○○様には、弊社のプログラムのためにお骨折りくださいまして、ありがとうございます」
「お骨折り」という言葉は「お力添え」の言い方を変えた丁寧な言い回しでもありますが、どちらかといえば「ご尽力」の意味と同じ意味を持ちます。「骨折り」という言葉は、実際に骨を折ることではなく『精を出して苦労をする』という意味があります。
一見、敬語に見えない言葉ですが、れっきとした敬語ですので「お力添え」や「ご尽力」をより丁寧な言い回しにしたい時に使うといいでしょう。しかし、「お骨折り」は、難しい言葉ですので、ビジネスの場や日常生活など、普段はあまり使わない言葉ともいえます。
「お骨折り」という言葉は「ご尽力」や「お力添え」の類義語・言い換えと覚えておけば、難しい言い回しを使う時にすんなりと使うことができるでしょう。
「お力添え」の意味を知って正しく使おう
いかがでしたでしょうか。今回はビジネスの場でもよく使われる「お力添え」の例文や「お力添え」の意味や使い方について解説してきました。「お力添え」はビジネスの場でなくとも、相手が目上の方やどうしても協力してほしい相手で、交渉をうまく成立させたい時や協力してもらったことの感謝の言葉に使うといいでしょう。
また「お力添え」は自分に対しては使えない言葉ですので、「お力添え」を使う時は相手に物事や協力してほしいことを伝えたい時に使うと覚えておくと理解しやすくなります。ぜひ「お力添え」を使った敬語をマスターしてビジネスの場で正しく使ってみてはいかがでしょうか。