あなたの職場でのストレス、もしかしたら原因はモラハラかもしれません。モラハラはその性質から、周囲の人たちだけでなく被害者本人も、モラハラだと気づかないことがあるのです。この記事では職場のモラハラの特徴や具体例、対処法についてもまとめてご紹介します。
モラハラとは職場で精神的苦痛を与えられること
あなたは職場の誰かに、精神的な苦痛を与えられていると感じることはありませんか?もしかしたらそれは「モラハラ」かもしれません。今回は職場で行われるモラハラについて、具体例も交えてご紹介します。
モラハラとは
モラハラは「モラル・ハラスメント」の略ということは、よく知られているかもしれません。モラハラは身体的な暴力は振るわず、言葉や態度で嫌がらせをし、精神的苦痛を与える行為のことです。精神的な暴力、虐待と言い換えることもできるでしょう。 モラハラの加害者は、被害者以外にとってはいわゆる「感じのよい人」であることが多く、周囲からもそんなことをするようには見えない、と思われるような人です。そのため、被害者は「自分のほうが悪いのでは」と思ってしまいがちなのです。
パワハラとの違い
モラハラと似た言葉に、「パワハラ」があります。こちらは「パワー・ハラスメント」の略であり、「パワー」の言葉通り、職場での立場や上下関係という「権力」を利用して、精神的・身体的苦痛を与える行為を指します。 それに対しモラハラは、上下関係のあるなしにかかわらず行われるため、夫婦間や家族間にも見られます。職場においては、同僚同士や部下から上司へ行われることもあります。
また、パワハラは威圧的な行為が多く、周囲も気づきやすいのですが、モラハラの加害者は周囲に気づかれないように陰湿に被害者を追い詰めるので、被害に遭っている本人も、自分が被害者だと気づきにくいのです。 しかし、目に見える暴力が少ないとはいえ、被害者の心の傷は決して小さいものではありません。何年も心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされることもあるのです。
職場でのモラハラの特徴
自分が受けているのはもしかしたらモラハラでは?と悩んでいる人もいるかもしれませんね。モラハラはさまざまな立場・場面で起こるものです。職場で受けるモラハラにはどんな特徴があるのか、みていきましょう。
モラハラは周囲に気づかれないことが多い
職場でのモラハラの特徴の1つ目は、周囲に気づかれない場合が多いということです。モラハラはパワハラと違い、言葉や態度といった証拠に残りにくい部分で行われるためです。モラハラ加害者は自分を正当化し、被害者を否定し続け、駄目な存在だと錯覚させます。 しかし状況や当人の受け取り方によっては、仕事上の注意や指導の延長とモラハラとの区別がつきにくいこともあります。そのため、被害者は自分が悪いと思わされてしまい、モラハラされているとは気づきにくくなってしまうのです。 また、職場のモラハラは密室や2人きりのときなど、他者が見ていないところで陰湿に行われます。被害が表沙汰になりにくいため、周囲の人たちに気づかれないまま、長期間にわたって被害を受けてしまうこともあるのです。
モラハラには上下関係がない
職場でのモラハラの特徴として、加害者と被害者に上下関係があるとは限らない、ということもあげられます。パワハラの場合は職務上の上下関係を利用して行われますが、モラハラには立場の強さは関係ないのです。 パワハラは職場で行われるものですが、モラハラが行われるのは職場だけではなく、家族間や夫婦間、ご近所づきあいの間でも起こりえます。モラハラは上下関係のあるなしを問わないため、部下から上司、パート・アルバイトから社員に対して行われることもあります。 相手との立場が対等だったり、自分のほうが上のはずでも、相手に対して反論できない、抵抗できないといった状態にある場合は、もしかしてモラハラの被害に遭っているかもしれません。
職場の同僚同士のモラハラも
本来対等な立場であるはずの同僚からの嫌がらせ・いじめも職場でのモラハラに当たります。被害者の人格への攻撃だけでなく、仕事も絡んでくるため、被害者は能力も否定されることになり、ますます自分に罪悪感を持つようになってしまいます。 職場の同僚との間では、どちらが仕事上の優位に立つかという権力争いや、仕事ができる同僚への嫉妬を理由に、モラハラが行われる場合もあります。仕事ができる女性に対して、男性の同僚からの妬みがモラハラという形で現れたりもします。 被害者は精神的に限界まで追いつめられ、労働意欲をなくし、最終的には退職にまで追い込まれることもあるのです。
職場でのモラハラの具体例とは
モラハラは、まずされているという自覚が必要です。もし職場で、正当な理由がないにもかかわらず、ここにあげる具体例のようなことが行われていたなら、モラハラを疑ってみるべきです。 モラハラは我慢しているとどんどん悪化する可能性があります。加害者の手口を知って、モラハラかどうかを見きわめましょう。
能力に見合った仕事を与えられない
職場でのモラハラの具体例として、能力に見合った仕事を与えない、ということがあげられます。コピーとりやお茶くみといった雑用ばかりさせたり、大事な仕事はその人にだけさせないといったものがあります。 また、業務に必要な必要な指示を出さなかったり、情報や資料を渡さず仕事を妨害することもモラハラになります。逆に、さばききれないほど大量の仕事を押し付けたり、やったことのない仕事をするように強要するということもあります。 そうして失敗するように仕向けておきながら、被害者に自分が無能だと思い込ませるのが加害者の手口です。被害者は自分の職場での存在価値を否定される上に、仕事での評価も下がってしまったりするのです。
誹謗中傷されたり暴言を吐かれる
職場で誹謗中傷されたり、度を越した暴言を吐かれる、というモラハラもあります。「死ね」「バカ」などの幼稚なものから、「チビ」「デブ」「ハゲ」などの身体的な特徴をからかう悪口も、悪質なモラハラです。 また「お前は本当に仕事ができない」などと攻撃したり、みんなの前で笑いものにする侮辱行為もあります。その反対に影でコソコソ悪口を言ったり、メールで中傷を広めたりということも起こります。 暴言は侮辱罪・名誉毀損罪に当たる場合もあり、決して軽く見てよいものではありません。放置すれば、被害者の精神的なダメージは計り知れないものとなってしまいます。
周囲から無視されて孤立する
職場でのモラハラの中には、同僚同士が結託して、1人を仲間外れにするというものがあります。挨拶や話しかけても無視することに始まり、職場の飲み会や行事に1人だけ誘わないなど、被害者は日常的に無視されることになります。 業務に必要な連絡をしなかったり、上司の指示を無視するなど直接業務に支障が出る場合もあります。 無視は典型的な嫌がらせの1つであり、被害者を周囲から孤立させる精神的な苦痛を与えるものです。しかし、無視は証明することが難しく、思い込みと勘違いされやすいため、被害者は1人で我慢し続けることになってしまうのです。
私生活や休日などのプライベートに干渉してくる
職場でプライベートを持ち出され、休日の過ごし方をしつこく詮索してきたり、家族や趣味、結婚などについて執拗に聞き出そうとするのもモラハラの可能性があります。 嫌がっているのに根掘り葉掘りプライベートを知りたがり、今度は聞き出したことをネタに、周囲にバラしてからかいのネタにするなどは、被害者の尊厳を傷つける行為と言えるでしょう。 この場合、加害者のほうは相手が嫌がっているとわかっておらず、悪意がないこともあるので厄介です。また、被害を訴えても雑談の延長程度に受け取られて、周囲が理解してくれないことも多いのです。
職場でのモラハラ!?されたかどうかの判別基準とは
周囲にも受けている当人にも、気づかれにくいのがモラハラです。職場でモラハラが行われた場合、それがモラハラだと自覚するのは難しいこともあります。被害者の中には気のせいだとか、自分が悪いからだとか、真面目に受け止めて改善しようと努力する人までいるほどです。 しかし被害者は追いつめられ、心が疲弊した結果、仕事に影響が出たり、体調不良というかたちになって現れることもあります。職場での嫌がらせ行為によって、精神的にも身体的にも苦痛に感じているかどうかが、モラハラの判断基準になるのです。 ですから、嫌がらせに言い返せる人、気にせず受け流せる人、自分は悪くないと自信を持って言えるタイプの人は、モラハラを受けているとは判断されないでしょう。
職場でモラハラされたときの対処法
職場でモラハラを受けているとわかったら、トラブルを解決するべく対処しましょう。モラハラの被害者だと気付いた時点で、一歩前進です。もう自分だけが悪いと考えるのをやめて、今日からできる対処法をためしてみてください。 自分でできることもありますし、専門家の助けが必要なこともあります。モラハラ被害者は対処する気力を削がれてしまっていることもあります。1人でなんとかしようとせず、第三者の助けを借りてみましょう。
当事者と距離を置く
職場でのモラハラの対処法として、可能であれば加害当事者と距離を置くことをおすすめします。被害者は心にダメージを受けたことで、正常な判断ができなくなっている場合もあります。まずは冷静になって、自分を守れる環境を整備しましょう。 自分の憂さ晴らしのために、被害者に攻撃するタイプの加害者もいます。意図的にそういう加害者と距離を置くことで、モラハラ被害に遭うことを避けるのです。
メモしたり録音するなどして証拠を集める
職場でモラハラの被害に遭ったときに大事なのは、証拠を集めておくことです。モラハラを受けたという証拠があれば、後々誰かに相談したり、対策を取るときに役立ちます。当事者と距離を置いても効果がなかったら、モラハラの証拠を集めましょう。 暴言や誹謗中傷、電話などは録音します。無視されていることを録音で証拠にするのは難しいので、できれば録画をしておきたいところです。 加害者からのメモや書類もとっておきましょう。些細なことでも重要な証拠になりえます。メールやLINE、SNSの内容も、画面やデータを保存しておきます。自分でも、起こった出来事の詳細をメモしたり、日記をつけておきましょう。
医師の診断書をとる
職場でのモラハラは長期にわたって行われることもあり、被害者に多大なストレスを与えてしまいます。その結果、心身に不調があわられたり、精神疾患に罹ってしまったという例も珍しくありません。その場合は診察を受け、診断書をとっておきましょう。 しかし、診断書だけでは、不調の原因が職場でのモラハラなのかどうか、認められにくい可能性があります。そこで、集めておいた証拠が役に立つのです。証拠とセットで診断書を用意しておくのがベストです。
上司や社内の窓口に相談する
職場のモラハラは、1人で抱え込んでも解決するのは難しいでしょう。まずは上司や、会社のハラスメント窓口に相談しましょう。会社はモラハラを解決する義務がありますし、相談したという事実が、モラハラがあったという1つの証拠となりえます。 それでも解決しない場合は、各都道府県にある労働局で、無料で相談にのってもらえます。ただし、労働局には大きな強制力はありません。そこでも解決しなければ、さらに弁護士に相談するという方法があります。 最終的には、加害者を相手取って、法的に訴えるという手段もあります。そんなときにも証拠が重要となります。小さなものでもよいので、できるだけたくさん集めておくことが大切です。
職場のモラハラは自分を責めずに相談しよう
今回は、職場でのモラハラについて詳しくご紹介しました。モラハラは表立って行われないために、周囲だけでなく被害者本人すら、モラハラだと気づきにくいということでした。 しかし気づかれにくいからといって、心身の傷が浅いわけではなく、仕事を辞めざるを得なかったり、何年も精神的なダメージから回復しない場合さえあるのです。職場のモラハラは、会社にとっても軽視できない問題と言えるでしょう。
モラハラ被害者は真面目で責任感が強いことが多く、つい「自分のせいでは」「自分が悪い」と思ってしまいがちです。しかし、ほとんどの場合、悪いのはモラハラをする加害当事者です。実は加害者のほうにこそ、問題があるのがモラハラなのです。 もしあなたがモラハラの被害に遭ったなら、決して我慢し続けないことです。心身を健やかに保ち、安心して仕事をするためにも、ここにあげた対処法を参考にして、1人で悩まずに、しかるべきところに相談してくださいね。