転職活動を行う上で、少しでも自分をよく見せて採用の可能性を上げようと、偽りの学歴を申告したり偽装することを、学歴詐称と言います。
具体例としては、大学中退を大学卒業したことにするなどです。新卒の場合は難しいですが、転職となると、大学の卒業証明書の提示を求められることは少ないので、中退を卒業としてしまう人がいます。
学歴詐称は、軽犯罪違法といって罪にあたることを覚えおきましょう。
学歴や職歴を詐称しても入社できるの?
学歴詐称や職歴詐称をしても入社できるかというと、後でバレるバレないは別にして、できる場合もあります。
新卒採用だけでなく、中途採用の場合も卒業証明書や成績証明書など、学歴の確実な証拠の提出が必要な企業はありますが、コピーの提出でも可能である会社は、偽造が可能です。
労働契約や入社契約書において学歴や職歴について言及しない会社であれば、学歴詐称があっても入社できてしまうケースは稀にあります。
転職でやってしまいがちな学歴詐称6つ
新卒と違って、チェックの甘いところがある転職では、つい転職活動を成功させたいがあまりに、不正な学歴詐称をはじめとする虚偽の履歴を書いてしまうことがあります。
すぐにバレなくても、書類の提出や人の噂などから学歴詐称、経歴詐称はバレてしまいます。ただ懲戒免職になるだけでは収まらず、場合によれば罪に問われることもあり、その後の転職活動が大いに厳しくなります。けしてお勧めできることではありません。
1:大学を卒業したことにする
新卒であれば、大学の卒業証明書を提出することがほとんどなので、大学卒業にするのは難しいですが、転職では、大学の卒業証明書の提示を求められることは少ないので、「大学中退」を「大学卒業」に書き換えて学歴詐称をする人もいます。
しかし、SNSの浸透により誰でも個人情報を知りやすい環境であり、学歴詐称はは以前よりバレやすくなっています。学歴詐称は軽犯罪違法になり、最悪の場合は懲戒解雇となります。
2:職務経歴の年月を書き換える
職務経歴に在籍していた会社とその期間を書く際、一社あたりの在籍期間を長く書き換える人がいます。
特に転職回数の多い人は、「ひとつの会社に長くとどまれない性格で、採用しても辞めてしまうのではないか」という印象を与えてしまうので、このような経歴詐称をしてしまいます。
しかし、転職の際に提出する雇用保険被保険者証、年金手帳、源泉徴収票といったものから、職歴に矛盾が生じて、すぐにバレてしまいます。
3:ウソの実績を書く
販売・営業職では、数字で表れる実績はとても重要視されます。例えば、前職が店長職で、実際は未達成だった目標を、全て達成したように偽ったり、営業職では、業績が良く社内表彰されたなど嘘をつくと、採用する側の期待値は高まります。
嘘をついて入社できても、期待したような働きぶりではないと、すぐに不審がられてしまうでしょう。前職に問い合わがあればすぐにバレて、自分で自分の首を絞めてしまうことになります。
4:学位や資格を取得をしたことにする
履歴書には資格欄がありますが、この資格は転職活動において武器になりますし、職種によっては、資格がなければ応募資格がないものさえあります。
採用の決め手になるような社会労務士、ファイナンシャルプランナーなどの虚偽申告は、詐欺と見なされ法に触れるので、絶対に止めましょう。
芸能界でも、MBA(経営学修士)の学歴詐称の発覚後、メインキャスターを務める予定の番組を降板させられ一躍ニュースになっています。
5:雇用形態を偽る
少しでも経歴を良く見せたいために、雇用形態を、例えば派遣社員を正社員と偽るケースがあります。実際、正社員と変わらない仕事をしており、経験もスキルもあるのに、待遇は正社員以下で悔しい思いをした人がやってしまいがちです。
しかし、雇用保険の加入履歴からも知ることは簡単ですし、正社員ではないが同等のスキルと経験があることを評価してくれる会社を探した方が、雇用側も雇用される側も気持ちよく働けるでしょう。
6:転職回数を少なく偽る
就労期間の短さや転職回数の多さが目立つと、心象が悪くなるのではないかと考えて、転職回数を少なく偽って記載する人がいます。
しかし、厚生年金の納付記録にある会社名と支払い期間に相違があるとバレてしまいます。懲戒免職は免れても、社内で信用を失うと、もうその会社で出世することは難しくなるでしょう。
アピールしたい経歴は具体的に書き、触れられたくない経歴は簡単にまとめるなどメリハリをつける工夫をしましょう。
学歴詐欺はどんな時にバレてしまうのか?
学歴詐称がバレる理由は、人事が身元調査をした、面接官に怪しまれた、SNSで発覚した、職場の人経由でバレたなどが考えられます。他にも卒業証書の提出や、源泉徴収などの書類で学歴詐称が発覚することもあります。
ここでは、転職のどんな時に学歴詐称や経歴詐称がバレてしまうのか紹介します。
転職エージェント経由
転職エージェントが気づく場合は、提出された職務経歴書をもとにキャリアアドバイザーと話をすると噛み合わない部分が出てきて発覚することが多いです。
特に管理部門は専門職なので、経験年数や経験業種、前職の会社概要と矛盾があると経歴詐称がバレやすいでしょう。
転職活動中で書類を訂正したところで、経歴詐称をした事実は消えないので、敬遠され紹介求人は激減します。一気に信用を失うリスクの高さがあると考えましょう。
外資系企業の多くで採用前に行われるリファレンスチェック
外資系企業では、当たり前のように行われているリファレンスチェックですが、近年日本企業でも、管理部門や会計業界、金融機関で、選考が進んだらリファレンスチェックを行うことが増えています。
リファレンスチェックとは、転職前に勤めていた前職への在籍期間や実績、人物像などを第三者(前職の上司や同僚など)に話を聞いて、学歴詐称、経歴詐称がないかを確認することですが、このチェックを誤魔化すことは難しいでしょう。
卒業証書提出
新卒採用だけでなく、転職の場合でも、近年の学歴詐称の増加をうけて、卒業証書や成績証明書などの提出を求めるケースもあります。
また、専門的な資格が必要な資格が必要な業種の場合は、その合格証や資格証の提示を求められることがあります。
高品質のカラープリンターなどで偽造する人もいますが、これは公文書偽造の罪に問われる非常に危険で悪質な学歴詐称行為にあたります。
源泉徴収票の提出
年をまたがずに転職をする場合には、前職の会社が発行する「源泉徴収票」の提出を求められることがあります。
労働者が、自分で確定申告すれば、必ずしも提出する必要はありませんが、手間のかかる確定申告をあえて「自分で確定申告をする。」申し出は、経歴詐称を疑われる可能性が高まります。
「紛失した」「発行してもらえない」という言い訳も一般的な会社では再発行してもらえるため、あなたの経歴が疑われる第一歩になります。
企業への経歴チェック
企業側が、専門の調査会社に、応募者の前職調査を依頼して、経歴詐称や学歴詐称が発覚することもあります。
個人情報保護法や、経費がかかるという面から、前職調査を行う企業は減っていますが、調査によって明らかになることも少なくはありません。
最近では、SMS(Facebookなど)を見て、学歴詐称や経歴詐称がないか調べるケースもあります。学歴詐称、経歴詐称はネット社会だからこそ見つかりやすくなっています。
学歴詐称や経歴詐称がバレてしまったらどうなるのか?
日本の多くの企業は、就業規則において「職歴、学歴、犯罪歴などに関する虚偽の申告があった場合は、その者を懲戒免職事由に該当する」といった内容を定めているところが多いです。
学歴詐称や経歴詐称で懲戒免職になってしまった場合、次の転職に影響があり、公文書偽造など内容が悪質な場合は法に触れてしまうこともあるでしょう。
学歴詐称の場合
日本の多くの企業は、就業規則において学歴に虚偽の申告があった場合は、懲戒免職事由に該当するといった内容を定めています。
転職活動の際、学歴詐称の発覚の可能性を低くするため、カラープリンターを用いて卒業証明書を偽造する人もいますが、大学の卒業証明書偽造は、公文書偽造罪という罪に該当します。
これは、罰金だけで済まず、3か月以上5年以下の懲役が課されるので、学歴詐称発覚時のリスクは大きいものになります。
職歴詐称の場合
職歴査証が発覚した場合、一番に考えられる事態が「解雇」です。社員の根幹と言ってもよい職歴に嘘を記載するような人間を信用できるかというと、大変難しいでしょう。
仮に解雇は免れても、そのことが原因で配置転換されたり、転職先の会社から厳しい雇用条件を提示されても、職歴詐称の負い目がある以上、聞き入れる他なくなる場合が多いです。
さらに、職歴詐称が同僚にバレた場合は、周囲の信頼を一気に失うこととなります。
犯罪歴があった場合
犯罪歴は、履歴書に記載しなくても構いませんが、面接や書類の契約書などで、「前科、前歴はありますか」という質問に対しては、正直に返答しなければなりません。
しかし刑法第34条の2では、禁固刑の場合は10年、罰金刑以下の場合は5年経過すれば、法的には一般人と同じとされます。
ただし、あなたの名前が新聞、テレビニュースで報道された場合、あなたの名前で検索するとヒットしてしまって発覚する可能性はあります。
病歴があった場合
傷病手当が、会社の保険組合からわかる場合もありますが、そこから発覚することは少なく、身辺調査という形で、興信所を使ってあなたの身辺を調べるということも、今ではほとんど行われていません。
ただし、あなたが心の病で退職後、転職を急いで再発し、重大なミスを繰り返したり、欠勤が続くようであれば、会社から追及されます。
復帰を焦る気持ちがあっても、面接で嘘をつかない、無理をしないことです。
年齢詐称の場合
採用条件に合わすために、年齢を低く、あるいは高く詐称するケースがあります。解雇まで至らない場合もありますが、社内の信用を失ってしまい、その会社においては今後のキャリアの見通しが暗くなるでしょう。
定年まであとわずかにも関らず、10年以上も虚偽の記載をする場合もあります。ベテランであると採用側も信用してしまいがちです。身分証等の確認ですぐにバレる事なので虚偽申告はリスクが高いことを知っておきましょう。
嘘をつくことは自分のためにならない
偽りの経歴は、自分の希望する仕事に転職するためのチケットになり得る可能性はありますが、後になって辻褄を合わせたり、いつ嘘がバレるかという不安を抱えながら働くことになり、自分のためになりません。
昨今は、高スペックの人材にこだわらず、個人の才能や個性に目を向ける企業は増えてきています。「ありのままの自分」に入社のチャンスを与えてくれる会社を見極め、背伸びせずとも健全に働ける仕事探しを心がけましょう。